こんにちは。横浜市緑区にある歯医者「礒部歯科医院」です。
過去に歯科医師から歯や歯茎の黒ずみ、歯周病の進行が喫煙と関係していると指摘された人もいるかもしれません。タバコが及ぼす身体への害は広く知られていますが、インプラントにも影響はあるのでしょうか。
もし喫煙がインプラントに悪影響を与えるのなら、インプラントの治療を開始する前に正しい知識を得て、適切に対処する必要があります。
今回は、喫煙がインプラントに与える影響について詳しく解説します。インプラントのメリット・デメリットについてもまとめているので、インプラントを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
インプラントとは?
インプラントとはどのような治療法なのか、メリット・デメリットを含め確認しましょう。
インプラントの特徴
インプラントは、失われた歯を補うために顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。
同じく失った歯を補うための治療法である入れ歯は、口の中に装着するだけです。食事中にずれることがありますが、インプラントはしっかりと固定されます。
入れ歯に比べると、自分の歯のような自然な使い心地が得られ、メンテナンスによって長期間使用できます。
インプラントが骨と結合するメカニズム
インプラントが骨と結合するのは、オッセオインテグレーションという生体学的な反応によるものです。インプラントの表面と骨が直接接触し、骨細胞がインプラント表面の微細な凹凸に入り込み、骨とインプラントが生体学的に結合する現象のことをいいます。
金属の中でも、特にチタンには骨と結合する性質があることが発見されました。さらに、インプラントの表面には特殊な研磨加工が施されるので、骨細胞が付着しやすいのです。
インプラントの手術直後からインプラント表面に骨細胞が付着し始め、インプラントと骨が一体化していきます。
インプラントの構造
インプラントは大きく分けて、顎の骨に埋め込む人工歯根と、人工歯根と人工歯をつなぐアバットメント、その上に取り付けられる人工歯の3つのパーツで成り立っています。人工歯根はチタンでできており、歯の部分には、セラミックやレジンなどが使われます。
こうした構造によって、インプラントは歯根と歯冠の両方を人工的に再現でき、自然な歯に近い機能と見た目を回復が期待できるのです。
インプラントのメリット
インプラントの大きなメリットは、機能性と審美性の高さです。
自分の歯のように使える
人工歯根と顎の骨が結合するので、自分の歯のようにしっかりと噛む力が得られます。入れ歯やブリッジでは、噛む力が弱くなることや、物が挟まることがありますが、インプラントはそうした問題が起こりません。
自然に会話や食事を楽しめるのはインプラントのメリットです。
審美性の向上
インプラントでは、人工歯にセラミックやジルコニアなどの素材を使います。自然で美しい歯を作ることが可能です。
入れ歯は金属の部分が見えることがありますが、インプラントは本物の歯と見分けがつかないほど自然に仕上がります。笑顔に自信が持てるようになり、精神面にもポジティブな影響を及ぼすでしょう。
他の歯に負担をかけない
インプラントは周囲の健康な歯を削ったり、負担をかけたりすることがありません。長期的にお口の健康を維持できるでしょう。
例えば、ブリッジの場合は、被せ物を装着するために歯を削る必要があります。歯の寿命を縮める可能性がありますが、インプラントでは歯を削る必要はありません。
しっかり噛むことによる健康増進
インプラントによって噛む力が回復するので、咀嚼機能が向上します。食べられる食品の種類が増えるため、栄養バランスを保ちやすいです。
しっかり噛むことは脳の活性化にもつながるでしょう。
インプラントのデメリット
インプラントにはデメリットもあります。外科的な手術を伴うので怖いと感じる人もいるでしょう。また、治療費が比較的高額で、長持ちさせるためにはメンテナンスが必要です。
手術が心理的な負担になる
インプラントでは、顎の骨に人工歯根を埋め込む手術を行います。手術は局所麻酔のもとで行われ、顎の骨には痛覚がないため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。
ただし、ドリルを使う外科手術のため、手術中に生じる音や振動が伝わることや、出血することがあります。手術後に痛みや腫れが生じる可能性もあります。
人によっては、手術が心理的な負担になることもあるでしょう。
治療費が高額になる
インプラントは保険適用外の治療です。保険適用の入れ歯やブリッジと比べて、経済的な負担は大きくなります。希望する治療が予算内に収まるかどうか確認しなければなりません。
メンテナンスが必要になる
インプラントを長持ちさせるには、定期的なメンテナンスが必要です。歯科医院での専門的な洗浄や、インプラントの状態のチェックを定期的に行います。日々のセルフケアも大切です。
喫煙がインプラントに及ぼす影響
喫煙に健康上のデメリットがあることは広く知られていますが、インプラントに対しても悪影響があります。
ニコチンの影響で血流が悪くなる
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。血管収縮によって血流が悪くなると、体の各部位への酸素や栄養の供給が不足するのです。
口腔内では、血流の低下により歯肉への酸素や栄養の供給が不足し、細胞の活動が低下します。コラーゲンの生成が阻害されて、細胞の再生や傷口の治癒が遅くなるのです。
インプラントは、人工歯根を骨に埋め込み、骨と結合させることで安定します。血流が悪いと、人工歯根の周囲の骨へ酸素や栄養が十分に供給されません。骨の新生が阻害される可能性があります。
唾液が減少する
タバコに含まれるニコチンは、唾液腺の働きを抑制し、唾液の分泌を減少させます。
唾液には、口腔内の清掃作用や抗菌作用、酸性を中和する作用などがあります。喫煙により唾液の分泌が減少すると、これらの機能が低下するでしょう。
例えば、酸性を中和する唾液の働きが弱まれば口腔内が酸性に傾き、歯のエナメル質が溶けやすくなるのです。唾液の抗菌作用が弱まれば、口腔内の細菌の増殖が抑えられず、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
免疫力が低下する
タバコに含まれる有害物質は、免疫系にダメージを与えます。タバコの煙にはニコチンのほかにも、一酸化炭素やタールなどの有害物質が含まれます。白血球の機能を低下させることが大きな問題です。
白血球は体内の異物を排除する役割を担っていますが、喫煙によって機能が低下すれば体の防御機能が弱まります。炎症を起こしやすくなり、感染症にもかかりやすくなります。
インプラントの手術における感染リスクが高くなる可能性があるのです。
歯周病が進行しやすい
喫煙は歯周病の進行を促進します。上述したように、喫煙により口腔内の血流が悪化し、免疫力が低下するためです。
歯周病が進行すると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。インプラント周囲炎は、インプラントの周りの組織が歯周病菌によって炎症を起こした状態です。
重症化するとインプラントが抜け落ちる可能性があります。インプラントを引き抜いて洗浄する必要が生じることもあるので注意しましょう。
人工歯の変色につながる
タバコに含まれるタールなどの有害物質が人工歯の表面に付着して、変色する可能性があります。人工歯が変色すると、見た目の美しさが損なわれます。
ただし、変色するかどうかは素材によって異なります。例えば、ハイブリッドセラミックは変色しやすく、オールセラミックはほとんど変色しないといわれています。
インプラント治療後も喫煙は控えたほうがいい?
インプラントの治療後も、喫煙は控えたほうがいいでしょう。先述したように、タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる性質があり、歯ぐきや骨への栄養や酸素の供給を阻害します。
さらに、喫煙は口腔内の環境を悪化させ、細菌感染や歯周病のリスクを高めます。インプラントで特に問題となるのが、インプラント周囲炎です。悪化すればインプラントを維持できなくなるでしょう。
インプラント周囲炎の原因は、歯周病菌です。歯周病のリスクを高める喫煙は、インプラントを長持ちさせるためにも避けたほうがよいでしょう。
まとめ
喫煙は、口腔内によくない影響をもたらします。唾液が減少する、血流が不足する、免疫力が低下する、などはその一例です。
唾液が減れば、口の中を清潔に保つ働きや、抗菌作用が十分に発揮されなくなります。血流が不足すれば、口腔内の傷口の回復が遅くなります。免疫力が低下すれば、炎症や感染が起こりやすくなるでしょう。
インプラント治療を受けた人にとって、インプラント周囲炎は注意すべき疾患です。インプラント周囲炎は歯周病菌が原因なので、歯周病が進行しやすい喫煙者は非喫煙者に比べてリスクが高くなります。
インプラントの治療を成功させるためにも、また、治療後にインプラントを長持ちさせるためにも、喫煙は避けることが望ましいです。
インプラント治療を検討されている方は、横浜市緑区にある歯医者「礒部歯科医院」にお気軽にご相談ください。